戦乙女が舞い降りた地で、
架空戦記
長編小説一作目、架空の世界を舞台にした戦争物の作品です。
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第2話 皇王は17歳の美少女?
「沙羅皇王、こんな敵かどうかも分からない男と会うのですか?」 「彼らはそんな危険な人物ではないと考えます。リオン少将もそういっているでしょう?彼女には人を見る目があると存じますが」 「しかし・・・」 沙羅はその後の言葉を手で制止し、 「しかしは許しません」 「承知いたしました」 彼らは渋々承知したという顔で部屋を出て行った。 近藤たちを乗せたヘリは郊外の小さな空軍基地、嘉島航空基地に降り立った。 ここは、普段は新米パイロットの訓練に使用される(時には偵察機の発着に利用されたりもする)いくつもある小規模基地のひとつであった。 民間空港や大きな航空基地もなくはないがなぜそこにしなかったのかというと、まだ彼らと艦の存在を出来るだけ秘密にしておきたいという考えからであった。 今、嘉島基地には近藤の乗っているヘリのほかには青い機体に大きく「訓練機-3」と白い字で書かれた航空機が一機あるだけだった。着陸するときに外を見た限りでは基地にはほとんど誰もいなかったが基地施設の整備は滞りなく行われているようであった。 しかし、ヘリポートがなかったので、普段は航空機が待機する場所に着陸することにした。 ヘリの外では、曇りガラスの黒い大型車が一台停車していた。今、そのドアは開いていて運転手が一人と女性が一人待っていた。その女性は近藤たちのところへ近づいてくるとリオン少将の方を向いて敬礼をした後、近藤たちの方にも敬礼をして「よろしくおねがいします、私は沙羅皇王の世話役を勤めさせて頂いております樺原霞です。皇王からあなたがたをお向かいに上がるようにと頼まれて参りました」と笑顔で握手を求めてきた。近藤は樺原と同じように笑顔で握手をしたが羅山は「羅山大佐だ」と真面目な顔をして樺原と握手をする。羅山が笑顔で話しをしているところを近藤は見たことがなかった。だから、初めて会う人はたいてい「冷たい人」だと言う。しかし、じっくり話せば羅山が「冷たい人」などではないことが分かるだろう。いつも冷たいように見られるのは元々そういうしゃべり方なんだと本人から聞いたことがある。 「荷物をお持ちしましょうか?」 樺原は近藤達の持っている荷物を見て言った。 「いえいえ、自分で持ちますから大丈夫です」 「そうですか・・。では、車へお乗りください」 樺原が中をさして乗車を促す。 近藤たち四人が車に乗った後すぐヘリは「伊瀬」へと戻っていった。そして近藤たちは皇王の皇居へと向かった。 車の中では、樺原とリオンと士官、近藤と羅山が向かい合って座っていた。 隣では、相変わらず羅山が真面目な顔で座っていた。車中では誰もしゃべっていなかった。 そこで、近藤はまだ聞いていないことがあることに気づいた。士官の名前をまだ聞いていなかったのである。 しかし、士官本人には聞きづらかった。何故かと言うとその士官は近藤の方をずっと睨んでいたから。軍服の肩についている階級章から少佐であることは分かっていた。 「リオン少将、隣にいる士官の名前をまだ聞いていなかったのですが・・」 「これは、失礼しました。私の将官付き士官のシオン・ラヴァラート少佐です。お恥ずかしながら、私は生まれてこの方書類を作るということが苦手でしてシオン少佐が書類を作成しているようなものです。だから、その点に於いてはシオン少佐には頭が上がりません」 シオンは、近藤を睨んだまま無言で敬礼をする。しかし、羅山に対しては満面の笑顔を作り 「シオン・ラヴァラート少佐であります。以後よろしくお願いします」と敬礼しながら言った。 近藤はなぜ羅山とこんなにも対応の仕方が違うのか、と疑問に思ったが思い当たる節は見つからなかった。 決心して近藤はその理由をシオンに聞こうと思ったが、近藤が口を開く前に樺原が口を開いた。 「もうすぐ皇居に着きます」 近藤は樺原の一言でシオンに聞くチャンスを逃してしまった。 今、部屋には皇王が真ん中に座り、その他には七人の人がいた 明らかに沙羅だけが周りの人よりも年下だ。それも20以上は年下だった。 しかし、皇王というだけあってその眼には周りの大人たちにも負けない意思が感じられた。 そこへ、内通電話がかかってきた。沙羅が受話器を取ると「分かりました」と一言だけ言って受話器を置いた。 「ここに、その未来から来たという方が着いたそうです。もうすぐこちらへ来るでしょう」 「沙羅皇王、その未来人とやらがどんな方なのか楽しみですな」 「そうですね氷城首相」 皇居の中に入った近藤であったが、かなり緊張していた。皇居の中、それも重要な意思決定会議にしか使用されない場所に通されるといっそう緊張する。 床にはいかにも高級そうな絨毯が敷かれており、天井にも近藤にはいくらするのか分からないような照明器具がつけられている。すべてが一級品であった。まさに皇王の住まいといったところか。 永遠に続いていそうな廊下を歩いて数分、やっとその部屋に着いた。 樺原がドアをノックすると中から少女の声で「ドアの鍵はかけていない。入りなさい」と声が聞こえた。 樺原がドアを開けるとそうそうたる人物たちがいた。皆、教科書でしか見たことのないような有名人ばかりであったからだ。 首相の氷城一、外務大臣、連邦軍参謀本部議長如月雄二、外交官のフェリネール・ジュラバス、他にも海陸空が来ていた。 「お待ちしておりました。羅山大佐と近藤中佐でしたね」 「はい、沙羅皇王とお会いできて光栄です」 沙羅皇王はこちらの方まで歩いてきて握手を求めてきた。皇王であるが17歳ということもあってまだ可愛い少女だというようにしか見えない。背も20pほど低かった。 しかし、眼だけは鋭かった。 「羅山大佐です」「近藤中佐です」 近藤たち二人は握手をした。 「そこにある椅子に座ってください」 樺原が皇王の隣に行き、近藤が座った後リオンとシオンが近藤の隣に並んで座った。 「さあ、全員そろったところで話を始めることにしましょうか。あなたがたが未来から来たという話はリオン少将から聞きましたが、こういう事はあいにく自分の目で見ないと信じない性格でありますのでその証拠をお見せいただけますか?まさか手ぶらで来た訳ではないでしょう?」 「はい、ちゃんとその証拠になりえるものを持って来ました」 そう言うと羅山大佐は持って来た鞄を開け、ノート型情報端末と投影機を取り出す。 「なんだね、それは?」首相の氷城が聞いてきた。 「電子演算機です。動画や画像、文章などのデータを膨大な量を保存することが出来ます。それらの情報を収集して複雑な演算を信じられないような速さで出来ます。あなた方が使っている大きな部屋が埋まってしまうような機械の何千倍の性能を発揮できます」 「それはすごい。未来にはそんなものがあるのか?全く想像できん」 「それでは、これからビデオを一つお見せします」 ビデオを見終わると皆一様に眼を丸くして驚いていた。 しかし、沙羅皇王だけは冷静にしていた。やはり一国を預かっている主である。 「これが本当だとして、貴方たちは我が国にどのような利益をもたらしてくれるのですか?」 「まずは、電子機器の技術提供をします。武器の技術に関しても支援したいと考えております。我々の技術を応用すればこれから始まるであろう戦争の被害を少しでも減少させることが出来ます。しかし、一番良いことは戦争を起こさないことですが・・・」 「私もそうすれば一番良いと考えているが、もういまさら引き返せないところまで来てしまいました。だから、あなたが言った通り戦争で出る被害を出来る限り少なくして、かつ早期に終わらせるようにしたいと考えています。その為にはあなたがたの技術提供を受け入れる他ないでしょう」 沙羅皇王がそう言うと氷城が手を挙げて発言を求めた。 沙羅が頷くと彼は言った。 「私もそう思います。ここは、提案を受け入れるのが賢明でしょう。しかし、提案を受け入れるとして戦い方はいかがしましょう?いくら技術を仕入れても戦い方が全く同じならさっき見たビデオのようになってしまうはずです。」 「そうですね、根本的に直さなくてはいけないかもしれません」 すると羅山が言った。 「貴国は世界有数の空母部隊を所持していますが、さっき見たビデオからでも分かりますようにこれからの戦いは先の戦いとは全く違う戦いになるはずです。すなわち、一回の決戦でかたがつく様な時代は終わり総力戦へと移行するのです。また、これからは情報戦です。敵味方の情報を迅速且つ正確に手に入れたほうが勝利を得られる時代になるのです」 「では、我々が計画中のセレバンテス帝国との艦隊決戦計画『Operations Light and Dark』も練り直さねばなりません」 如月が言った。 「しかし、セレバンテス帝国の艦隊戦力は侮れません。緒戦で撃滅しておこうという考え方は間違いではないでしょう。世界ではまだ航空機がどれほど優秀な兵器だとは知られておりません。だから、その考えを利用しましょう」 「どう利用するのですか?」 羅山の方を向き沙羅皇王が言った。 「私が知っている歴史と同じなら、緒戦でセレバンテス帝国やその同盟国の取る行動は同じでしょう。こちらも、最初はアルデンテ島を攻略しに出撃します。しかし、その後が違います。敵の艦隊をおびき出すことに成功したら航空機で攻撃するのを戦艦ではなくその護衛艦隊に振り向けるのです。その後、戦艦部隊でこれを撃滅するのです。最初に出てくる敵の艦隊は我々と同じくらいなのでこの戦法が通じるはずです。その後に出てくる本命の艦隊は我々の所持する空母部隊を総投入して攻撃するのです。そうすれば彼らの艦隊は壊滅的な被害を受け一定の期間中、大規模な戦闘行動が出来なくなるはずです。そうしたらこっちの物です。彼らの戦力が回復しないように海上の補給線を徹底的に破壊するのです。セレバンテス帝国はあまり被害を受けないかもしれません。しかし、同盟国は違います。彼らはほかの国からの補給が無ければ干上がってしまうでしょう。敵の一番強いところを先に倒せれば一番良いのですが、それではこちらも壊滅的な被害を受けてしまいます。そこで、まず敵の堀である同盟国を降伏させ、その後本陣であるセレバンテス帝国を倒しましょう」 「細かい所は再考すべき点がありますが、大筋としては間違っていないと考えます。セレバンテス帝国の同盟国ですが大セレネバ帝国はどうでしょう? 大セレネバ帝国は一番初めに同盟に参加した国でありましたが彼らが戦争に参加した理由は海軍部の暴走でありました。陸軍と政府は戦争に反対でした。だから、海軍の艦隊を撃滅し海上補給線を壊滅させれば海軍の発言力は著しく落ちるでしょう。そこを講和に持ち込めば彼らを味方に引き込むことも不可能ではないはずです」 海軍参謀総長の羽場摩羅 明日香が言った。 そうすると、フェリネールがそれに続けて話す。 「ルヴィアゼリッタ合衆国との関係強化もしましょう。政治思想は全く同じではないですが仮想敵国は一緒です。ここは協力して立ち向かえばより効率よく戦えるでしょう。もう一つ、セレバンテス帝国の艦隊を撃滅できればどっちに着くか決めかねていた国もこちら側についてくれるかもしれません。世界の大多数を味方にできればいろんな面で有利に働くでしょう」 「では、その考えで行きましょう。貴方たちは我が国協力するということですが『伊瀬』はリオン少将の指揮下に置くことにします。乗員も同じとします。良いですね?指揮下に編入した後は第一遊撃隊を編成します。第一遊撃隊にはアルデンテ島攻略戦において基地に対しての航空攻撃と索敵をしてもらいます。『伊瀬』の索敵装置を使わない手はないでしょう。では、『伊瀬』はとりあえず紀伊軍港に停泊させるようにしましょう。羽場摩羅海軍参謀総長、手配を頼みます。霞、大佐がたを嘉島航空基地まで送ってください」 「いえ、それには及びません。無線を貸してもらえれば部下にこの近くに迎えに来させます」 「霞、案内して」 「かしこまりました」 そして霞は近藤たちの方を向くと、 「こちらへ、私についてきてください」と言った。
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